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インターネット古文講座

KOBUN-Online

楊 暁捷  李 康民

 

1-4 歴史的仮名遣い

「仮名遣い」とは何か。現代日本語の例でいうと、例えば「今日は」という言葉において、「wa」の音は「わ」と書かないとされている。一つの音を表わす仮名が二つあるいはそれ以上ある場合、どれをつかうべきかということは、「仮名遣い」という。

言語の移り変わりを歴史的に見れば、発音の変化にだいぶ遅れをとって、書写の仕方が変わるということが分かる。日本語古文の場合、およそ十世紀までには、発音と書写とは大体それぞれに対応する関係が保たれていたと思われる。その後、発音と書写との乖離はだんだん問題になってきた。それまでに「はひふへほ」と記述されて発音ていたものの一部は、実際には「わいうえお」と発音するようになった。この現象はさらに進んで、「い」と「ゐ」と「ひ」、それから「え」と「ゑ」と「へ」との区別がつかなくなった。発音の変化に対応できるような書写の新しい規則が要求されるようになった。

この仮名遣いの問題を最初に取り上げたのは、鎌倉時代の文人である藤原定家だった。定家は言葉のアクセントや古文献の実例などにより仮名遣いの規則を作り、とくに和歌や物語類を平仮名で記す作法として世に行われるようになった。時代は下り、江戸時代になると、いわゆる国学の一環として、契沖はそれまでに広く行われてきた「定家仮名遣い」を批判し、『万葉集』を中心とする古代の仮名用法に従うべきだと提言し、新たな仮名遣いの規則を作り上げた。明治時代に入り、国の政府は国学者の流れを汲み、契沖の仮名遣いを「歴史的仮名遣い」として正式の文書や初等教育に取り入れるようになった。

このような古い文献に見られる仮名遣いの規則が日常生活の中から消えたのは、第二次世界大戦後のことだった。一九四六年に発令された内閣訓令は、新たな仮名遣いの規則を明確にし、これは「現代かなづかい」として現代日本語の表記の基準となっている。

古文の勉強において、仮名遣いについての知識は大切である。古文の文章を読解するには、書かれた仮名がどのように発音されていたかは、たしかに重要ではない。だが、現代日本語の知識をもって古文を勉強するということから考えれて、古文の読み方を知ることはたいへん意味をもつことになる。現にほとんどの現代日本語辞書は歴史的仮名遣いの綴り方を付記し、たいていの古語辞典も現代かなづかいと異なる言葉についてはいまの表記方に書きなおしたものを添える。古文の言葉と現代日本語との対応関係を知ったり、あるいは現代日本語の知識をもって古文の言葉を求めたりするときなど、歴史仮名遣いの知識はとても実用的な価値をもつ。

つぎに、いくつかのドリルを用意して、歴史的仮名遣いの主な規則を説明する。

・ 1-4-1 「ゐゑを」→「いえお」

・ 1-4-2 「はひふへほ」→「わいうえお」

・ 1-4-3 「ぢづ」→「じず」

・ 1-4-4 「あ+う」「あ+ふ」→「おう」

・ 1-4-5 「い+う」「い+ふ」→「ゆう」、「え+う」「え+ふ」→「よう」

・ 1-4-6 「くわ」「くゎ」→「か」

・ 1-4-7 総合練習

 

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