絵巻詞書集

 伴大納言絵詞
中巻第一段

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おとはつゆをかしたることなきにかるよこ
ざまのつみにあたるをおぼしなげきてひの
さうぞくをしてにはにあらごもをしき
ていで天道にうたへまうしたまひ
けるそのほどひと/\みなげきさは
ぎてあるほどにゆるしたまふよし
むまにのりながらうちいりたればいまは
つみせらるぞといひてひといへなき
しるにゆるしたまふよしおほせ
かけてまいりぬればまたよろこびなき
おびたしかりけりゆるされたびたれ
どおほやけにつかうまつりたまひては
よこざまのざいできぬべかりけりといひ
てみやづかへもしたまはざりけり


【読み下し】
大臣は、つゆ犯したることなきに、かる横
様の罪にあたるを、覚ぼし嘆きて、日の
装束をして、庭に荒薦を敷き
て、出で天道に訴へ申したまひ
ける。そのほど、人々みな嘆き騒
ぎてあるほどに、赦したまふよし、
馬に乗りながら、うち入りたれば、「いまは
罪せらるぞ」といひて、一家なき
罵しるに、赦したまふよし、仰せ
駆けてまいりぬれば、また喜びなき
おびたしかりけり。赦され賜びたれ
ど、「公に仕うまつりたまひては、
横様の罪、出できぬべかりけり」といひ
て、宮仕へもしたまはざりけり。