絵巻詞書集

 後三年合戦絵詞
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吉彦秀武将軍に申様城の中かたく守て
御方の軍すでになづみ侍にたりそこばくの
力をつくすともやくあるまじしかじ戦をとどめ
てただまきてまぼりおとさむ粮食つきなばさだ
めて身づからおちなむといふ軍をまきて陣をは
りてたてをまく二方は将軍これをまく一方
は義光これをまく一方は清衡重宗これを
まくかくて日数ををくる程に武衡がもとに
亀次並次といふ二人の打手ありならびなき
兵也これをこはうちとなづけたり武衡使を
将軍の陣へつかはして消息していはく戦や
められて徒然かぎりなし亀次といふこはうち
なむ侍めして御覧ずべしそなたよりもしかる
べき撃手一人出してめしあはせてたがひに
徒然をなぐさめられ侍べきかといひをくれり
将軍いだすべき討手を求に次任が舎人
鬼武といふ者あり心たけく身の力ゆゆしかり
けりこれをゑらびていだす亀次城の中より
をりくだるに二人闘の庭によりあへり両
方のいくさ目もたたかずこれを見る両方すで
によりあひてうちあふ事半時なりたがひに
いづれすきまありともみえずさる程に亀次が
投刀のさきしきりにあがるやうに見ゆるほど
に亀次が頭胃きながら鬼武がなぎなたの
さきにかかりておちぬ