絵巻詞書集

 後三年合戦絵詞
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将軍のいくさ悦の時をつくりてののしる声
天をひびかすこれをみて城中の兵亀次が首
をとられじとうちより轡をならべてかけ出
将軍の兵又亀次が首を取らむとて同かけあひ
ぬ両方乱れ交て大に闘将軍の兵数多して
城よりくだるところの兵ことごとくうちとられ
ぬ末割四郎惟弘臆病の略頌に入たる事を
ふかく恥として今日我が甲臆はさだまるべしと
いひて飯さけおほくくひて出詞のままにさきを
かくるあひだにかぶらや頸の骨にあたりて死い
きられたる頸の切目よりくいたる飯すがたも
かはらずしてこぼれいでたり見る者慚愧せず
といふことなし将軍これをききてかなしみていは
くもとよりきりとほしにあらざる人一旦はげみ
てさきをかくる必しぬる事かくのごとしくらふ
所の物はらにいらずしてのどにとどまる臆病の
者なりとぞいひける