藤原の資道は将軍のことに身した
しき郎等なり季わづかに十三にして
将軍の陳中にありよるひる身を
はなるる事なし夜半ばかりに将軍
資道ををこしていふやう武衡家衡
こよひ落べしこごえたるいくさども各
すへしたがかり屋どもに火をつけて
手をあぶるべしといふ資道このよしを
奉行す人あやしくおもへども将軍の
をきてのままにかりやどもに火をつけ
ておのおの手をあぶるにまことにその
あか月なむ落ける人これを神なりと
おもへりすでに寒のころをひにおよぶと
いへども天道将軍の心ざしをたすけ給
けるにや雪あえてふらず