絵巻詞書集

 後三年合戦絵詞
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武衡家衡食物ことごとく尽て
寛治五年十一月十四日夜つゐに
落おはりぬ城中の家どもみな
火をつけつ煙の中におめき
ののしる事地獄のごとしよ
もにみだれて蜘蛛の子をち
らすがごとし将軍の兵これを
あらそひかけて城のしもにて
悉ころす又城中へみだれ入て
煞すにくる者は千万が一人
なり武衡にげて城の中に
池のありけるに飛いりて水
に沈てかほを叢にかくし
てをる兵どもいりみだれてこれ
をもとむついに見つけて池より
引出ていけとらへにしつ又千任
おなじく生虜にせられぬ家衡は
花柑子といふ馬をなむもちたり
ける六郡第一の馬なりこれ
を愛する事妻子にすぎたり
にげんとて此馬敵のとりてのらむ
事ねたしといひてつなぎつけて
身づから射ころしつさてあやしの
げすのまねをして暫にげのび
にけり城中美女ども兵あら
そひとりて陳のうちへゐてきたる
男のかうべは鉾にさされてさきにゆく
めは涙をながしてしりにゆく