絵巻詞書集

 地獄草紙(東京国立博物館蔵)
第二段・火末虫

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また、この地獄に別所あり。なをば火
末虫といふ。このところの衆生、むかし、
人間にありて、殺生・偸盗・邪婬をよ
び、さけに水をいれておほくなして
うりたりしもの、この地獄におつ。こ
の地獄のつみひとの身より、あまたの
むしいでゝ、かはべ・しゝむら・ほねをや
ぶりて、その身をすひくらふ。その
くるしみ、しのぶべからず。さけぶこ
ゑたえず。
【読み下し】
また、この地獄に別所あり。名をば火
末虫と言ふ。この所の衆生、昔、
人間にありて、殺生・楡盗・邪婬及
び、酒に水を入れて多く成して
売りたりし者、この地獄に墜つ。こ
の地獄の罪人の身より、数多の
虫出でて、頭・肉・骨を破
りて、その身を吸ひ喰らふ。その
苦しみ、忍ぶべからず。叫ぶ声
絶えず。