つぎのひあむのごとくごの上手をつか
はしてうたするに勝負なしそのとき
にきびたうのかたのくろいしをひと
つぬすみてのみつかちまけをあらそ
ふをりたうじむまけぬあやしき事
なりとていしをかぞふるにたらずよりて
うらなふにぬすみてのめるなりとうら
なふきびおほきにあらがふにさらば
かりろく丸をふくせさせていださむとする
にきび又ふむじとゞめていださ
ずついにかちぬ
【読み下し】
つぎの日、案のごとく碁の上手を遣
はして打たするに、勝負なし。その時
に吉備、唐の方の黒石を一
つ盗みて飲みつ。勝ち負けを争
ふ折、唐人負けぬ。「怪しき事
なり」とて、石を数ふるに、足らず。よりて
占ふに、「盗みて飲めるなり」と占
ふ。吉備おほきに抗ふに、さらば
かりろく丸を服せさせて出ださむとする
に、吉備又封じ止めめて出ださ
ず。ついに勝ちぬ。
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