絵巻詞書集

 粉河寺縁起
第三段

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河内国さらゝのこほりに長者ありけ
り。たゞひとりもちたるむすめ、みの□□
みかきのごとくはれて、し□□□
て、くさゝかぎりなかりけ□□□
りて、すゑて三年があひ□□□
なはであるほどに、この長者のいゑにわらはき□
りていはく、「まことにやさふらふらむ。このとのゝ
ひめぎみの、よにいみじきやまひをして、
しぬべくおはしますときこゆるは、ま□□□
らば、七日ばかりいのりまいらせ□□□
いふ。長者よろこびていはく、□□□
ひだ、おほくの僧達を請□□□
まなくいのれどもかなはねば、すてゝをきたる
に、かくのたまふ。よにうれしき事なり。とく/\
いのらせたまへ」とて、あづけたれば、このわら□
まくらがみにゐて、千手陀羅□□□
てゝ、ひまなくいのる。
【読み下し】
河内国讃良の郡に長者ありけ
り。ただ一人もちたる娘、身の□□
み、柿のごとく踵れて、し□□□
て、臭さ限りなかりけ□□□
りて、据ゑて三年があひ□□□
なはであるほどに、この長者の家に童来(た)
りて曰く、「まことにや候ふらむ。この殿の
姫君の、世にいみじき病をして、
死ぬべくおはしますと聞こゆるは、ま□□□
らば、七日ばかり祈りまいらせ□□□
言ふ。長者喜びて曰く、□□□
ひだ、多くの僧達を請□□□
まなく祈れども叶はねば、捨ててをきたる
に、かくのたまふ。世にうれしき事なり。疾く疾く
祈らせ給へ」とて、預けたれば、この童
枕上に居て、千手陀羅□□□
てて、暇なく祈る。