絵巻詞書集

 粉河寺縁起
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いのるにしたがひて、うみ□□□
みやみもてゆく。七日といふつとめて、□□
さは/\となりて、うちをきてゐたり。ちゝはゝまど
ひいでゝ、このわらはにむかひて、「こはいかなるほとけの
わたり給ひて、かくはいのリ、いけさせ給つるぞ」
といひて、くらをひらきて、七珍万宝□□□□
童のまへにはねいだすをみて、「我□□
する身にはあらず。たゞひとへに□□
治しがたき病をいやし、人のね□□
とのみかまふる身にてあるなり。さらに/\ほしからず」
とて、たゞいでにいで給へば、むすめなく/\まへにひれ
ふして、「わがきみはほとけにこそおはしますめ
れ。衆生のねがひをみつるとおぼしめして、わ□□
をさなくより、みもはなたずもちて□□
候」とて、さげさやひとつ、くれなゐ□□□
らす」といへば、「それも無益なり」。され□□
るゝ事なればとりつ。さても/\、君はいづくにお□□
ますにか」と申せば、「ゐどころ、いづくとさだめたること
なし」「されども、こひしくおはしまさむにはまいり□
はむ」といへば、「我は、紀伊国なんかのこほりに粉河と
いふ所にはべるなり」といひて、いでゝおは□□
みれば、くらゝとうせぬ。
【読み下し】
祈るにしたがひて、膿□□□
み止みもてゆく。七日といふつとめ□□□
爽々となりて、うち起きて居たり。父母惑
ひ出でて、この童に向かひて、「こはいかなる仏の
渡り給ひて、かくは祈り、生けさせ給つるぞ」
と言ひて、蔵を開きて、七珍万宝□□
童の前にはね出だすを見て、「我□□
する身にはあらず。ただひとへに□□
治し難き病を癒し、人のね□□□
とのみ構ふる身にてあるなり。さらにさらに欲しからず」
とて、ただ出でに出で給へば、娘泣く泣く前に平
伏して、「我が君は仏にこそおはしますめ
れ。衆生の願を満つると思し召して、わ(らは)
幼くより、身も離たず持ちて□□
候」とて、「提鞘一つ、紅□□
らす」と言へば、「それも無益なり」。され□□
るる事なれば取りつ。「さてもさても、君は何処にお(はし)
ますにか」と申せば、「居所、何処と定めたる事
なし」「されども、恋しくおはしまさむには参り(候)
はむ」と言へば、「我は、紀伊国那賀の郡に粉河と
言ふ所に侍るなり」と言ひて、出でておは□□
見れば、くららと失せぬ。