絵巻詞書集

 直幹申文絵詞
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彼申文に、「直幹謹案内をかんがうるに、去天暦
二年、大学頭大内記より当職に拝せし日、所帯
の両官、みな停止せらる。朝家に文章博士をはじめ
をかれてよりのち、いまだその例をきかず。又、同四年
にいたて、三儀元夏式部少輔より儒職に除せし日、少
輔をやめずして、「兼」の字をたまはる。拝除の息こ
れ一なれども、栄枯の分をなじからず。人によて事
ことなり、偏頗にゝたりといへども、天にかはて官をさ
づく、まことに運命にかゝれり。独一職をまもりて、爰
七年をへたり」など、さま/\に書てたてまつりけるとなむ。
【読み下し】
彼申文に、「直幹謹案内を考うるに、去天暦
二年、大学頭・大内記より当職に拝せし日、所帯
の両官、皆停止せらる。朝家に文章博士を初め
置かれてより後、未だその例を聞かず。又、同四年
に至て、三儀元夏式部少輔より儒職に除せし日、少
輔を罷めずして、『兼』の字を賜はる。拝除の息こ
れ一たれども、栄枯の分、同じからず。人に依て事
異なり、偏頗に似たりと難も、天に代はて官を授
く、誠に運命に懸れり。独一職を守りて、爰
七年を経たり」など、様々に書て奉りけるとなむ。