絵巻詞書集

 奈与竹物語絵巻
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夜もやう/\ふけぬれどよるのをと
へもいらせ給はずとのゐ申のきこ
ゆるはうしになりぬるにやと御心をいたまし
むる程に蔵人しのびやかに此女房まいり
侍るよし奏し申ければうれしうおぼし
めされてやがてめされにけり漢武の
李夫人にあひ玄宗の楊貴妃に廻
たるためしもこれにはまさり侍らじと
御心のうちもかたじけなうさま/\かたらひ
給ほどにあけやすきみじか夜なれば
暁ちかく成行に此女房身のありさまをかき
くどきこまかにはあらねど心にまかせぬことのさ
まを奏し申ければまづ返しつかはされにけり
御心ざしあさからずやがて三千の列にもめ
しをかれ九重のうちのすみかをも御はからひ
あるべきにて侍りけるをまめやかになげき申て
さやうならば中/\御なさけにても侍らじふち
せをのがれぬ身のたぐひにもなりぬべした
このまにて人のいたくしらぬ程ならばたえず
めしにもしたがふべきよしを申ければついにも
とのすみかへかへされて時/\ぞ忍てめされける