絵巻詞書集

 奈与竹物語絵巻
第八段

第七段→ 


彼少将は隠者なりけるをあらぬかたに
つけてめしいだされてよろつに御なさけ
をかけられて近習の人数にくはへられ
などして程なく中将になされにけり
むとすれどおのづからもれきこゑて
人のくちのさがなさはその比のもてあつかひ
にてなるとの中将とぞ申けるなるとの
わかめとてよきめのぼる所なれば
る異名をつけたりけるとかや凡君と
臣とは水とうをとのごとし上としても
おごりにくまず下としてもそねみみだ
るべからずもろこしには楚の荘王と
申きみはてうあひの后の衣をひく物を
ゆるしてなさけをかけ唐の大宗と申
かしこき御門はすぐれておぼしめしける
后をも臣下のやくそくありとてくだし
つかはされけり我朝にもかるふるき
ためしもあまたきこゑ侍にやあらむ
いまの後さがの御門の御心もちゐの御かた
じけなさ彼中将のゆるし申けるなさ
けのいろいづれもまことに優にも
ありがたきためしにも申つたふべき
物をやきみとし臣としてはなにご
とにもへだつる心なくてたがひになさけ
ふかきをもとすべきにこそとむかし
より申つたへたるもことはりにおぼえ
侍べり

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