絵巻詞書集

 男衾三郎絵詞
第二段

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をぶすまの三郎あには一様かはりたり弓矢とる物の
家よく作てはなにかはせん庭草ひくな俄事のあらん時乗
飼にせんずるぞ馬庭のすゑになまくびたやすな切懸よ
此門外とをらん乞食修行者めらはやうある物ぞひきめかぶ
ら にてかけたて/\おもの射にせよ若者共政ずみ武の家
にむまれたれば其道をたしなむべし月花に心を
すまして哥をよみ管絃を習ては何のせんかあらん軍の
陣に向て箏をひき笛をふくべきかこの家の中にあらん
ものどもは女めらべにいたるまでならふべくはこのみたし
なめ荒馬したがへ馳引して大矢つよ弓このむべし惣
じては兵のみめよき妻もちたるは命もろき相ぞ
八ケ国の内にすぐれたらんみめわるがなとねがひて久目田の
四郎のムスを迎て夫妻とぞたのまれけるたけは七尺ばかりかみは
みあがりてもとゐのきはにわだかまるには鼻よりほか又見ゆる
ものなしへ文字ロなるくちつきよりいひいだすことばことにはかばかしき
事はなかりけり男子三人女子二人いでき給へり