かくてをぶすまの女房三郎に申合て国司の方へ案内ま
うさせける心は御目にかゝりし女みせたてまつりて仰に
したがふべしと申たりけれぱいそぎ又いり給へり
をぶすまのむすめ十九になるをなのめならずとりつ
くろひていだしたてまつる母にゝ給たるかたちなれば
かほはよこざまにてしかもなかひろなりめにはかな
まりをえりすゑたる様にてまゆはぬきつくろひたる
うへなをかきまゆなりまぶしたかくてさしかたなり
ひたひのかみちゞみあがりてしなもなしひとへに鬼に
ぞにたりけるこれもをやのめにはよくやみゆらん
国司心もとなくおもへるに一日のすがたにはひきかへて
心うし只一目ぞ見給へるそのゝちひとことば物をだに
の給はずうちうつぶしてぞおはしける色/\
しなじなのひきいでものたてまつりてこの女房をば
いかにも御心にまかせたてまつるべしといひけれども
とかくの返事もなくていで給へりいとゞねのひぞ
しのばれ給宿所にかへりておもひあまりに
ふたばよりみどりかはらでおひたらむ
ねのひのまつのすゑぞゆかしき
をとにきくほりかねの井のそこまでも
われわびしむるひとをたづねん
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