絵巻詞書集

 男衾三郎絵詞
第七段

第六段→ 


かくてをぶすまの女房三郎に申合て国司の方へ案内ま
うさせける心は御目にかりし女みせたてまつりて仰に
したがふべしと申たりけれぱいそぎ又いり給へり
をぶすまのむすめ十九になるをなのめならずとりつ
くろひていだしたてまつる母に給たるかたちなれば
かほはよこざまにてしかもなかひろなりめにはかな
まりをえりすゑたる様にてまゆはぬきつくろひたる
うへなをかきまゆなりまぶしたかくてさしかたなり
ひたひのかみちみあがりてしなもなしひとへに鬼に
ぞにたりけるこれもをやのめにはよくやみゆらん
国司心もとなくおもへるに一日のすがたにはひきかへて
心うし只一目ぞ見給へるそのちひとことば物をだに
の給はずうちうつぶしてぞおはしける色/\
しなじなのひきいでものたてまつりてこの女房をば
いかにも御心にまかせたてまつるべしといひけれども
とかくの返事もなくていで給へりいとねのひぞ
しのばれ給宿所にかへりておもひあまりに
 ふたばよりみどりかはらでおひたらむ
 ねのひのまつのすゑぞゆかしき
 をとにきくほりかねの井のそこまでも
 われわびしむるひとをたづねん

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