絵巻詞書集

 隆房卿艶詞絵巻


さてもわが 君につかへて こしかたは
春のみ山の はなになれ いまは雲井の
月かげの のどかにてらす 御代にあひて
心ゆく事 おほけれど かすがの山の
ふぢなみの 木だかき色に ひとしれぬ
心をつくし そめしより ねてもさめても
わすられぬ 思のみなる よしなさよ
かつみるうちも むねさはぎ みぬまはまして
けふいくか いつか/\と またれつ
さるはまたみる たびごとに 人にことなる
ふし/\は はかなき事も さもぞた
ためしもなきと おもひしむ ことのおほさは
ながはまの まさごのかずに たとへても
あかずおぼえて なにとして かくしも人に
ことなると 思ふにつけて なか/\に
つらくさへこそ おぼえけれ けふ又みても
またこひし みるかひおほき たまづさは
さらにもいはず 手にふれし 物としなれば
はかもなき  ちりのはしまで なつかしみ
とりつみぞをく かくまでに たあぢきなく
おぼゆるに みかきの山の さかき葉の
宮このたびに うつるとか あめの下みな
さはぎつ わきて如何にと おもふにも
さはぐ心は しほかぜに くだくる浪に
ことならず いかにやとのみ やすけなく
思ふもしるし 雲のうへに かよひしみちは
たえまおほみ たま/\はた ともしびの
影ほのかなる よひのまの なごりはさらに
さてしもぞ せむかたもなき こちなる
としたちかへる いそぎにも なにぞは春の
ひかりとも たれをかまたむ すさまじや
花のにしきを たちきても 君みぬ色は
ものうくて こといみしあへぬ なみだこそ
たもとにかれ かくしつ む月のこぬか
ふけし 夜はにあひみし そのほどの
心のまよひ いへばえに たとへていはん
かたもなし そのちさらに 恋しさの
色をそへぬる 心地して やがてうかれし
たましゐは 袖のなかにや いりにけむ
身にはかへらず つく/\と ながむるこ
いとしく あられぬまに さりとては
神ほとけにぞ いのらめと たのみなれにし
みたらしの 水のながれを たづねても
みそぎかひなき あぢきなさ さてもかたえの
もろ人に またさそはれて ちはやぶる
神の北野に おもむけば はれぬころを
しりがほに 空さヘくれし あめのつち
あまやどりして をぐるまを かれとばかりに
みやられし 竹のひとむら めにかけて
さてだにしばし あらばやと 思ふかひなく
やりすぐる なごりよいかに これさへに
忍がたきを こまならば ひのくま河に
あらずとも ひきもとめまし あやにくに
とをざかりゆく 木ずゑさへ ほのかになりし
ほどはげに そろにすむ なみだこそ
せきもとまらず おちまされ さてもからぬ
おりならば てうはい節会 じよゐ除目
これらのたより さな□□も みましなれまし
いはましと たおも影の たちぞ
春になりても けふははや 廿日になりぬ
あかざりし た一たびの ときのまの
そればかりなる うさよげに 如何にやいかに
いかにせむ/\
 ふりかすむ雨に
  涙もおちそひて
   かき
  くらされし
   みちの空
      かな
 ためしなき
  心のうちをことの葉
         に
   いはあさくも
    なりぬべき
        かな
 しるらめややどの
  木ずゑをかれと
        のみ
  なみだのうちに
   ながめやる
       とも

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