絵巻詞書集

  東征伝絵巻
巻一第二段

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龍興大明延光等の寺にして律を講
し、戒をさつけたまふことしはらくも
をこたることなし。むかし道岸律師世に
きこえ、人にひてゝ、四百余州みな受戒の
師とあふく。岸律師遷化の後、弟子杭州
の義威律師ひんきを四遠にあけ、徳を
八紘になかしき。諸州またもちゐておな
しく受戒の師とす。威律師円寂の
のち、開元二十一年和尚歳四十六にして
江南江左のあひたにきよく戒律をたも
てること、たゝ和尚ひとりのみ衆僧にこえ
たまへり。道俗帰敬して、受戒の大師と
す。又清涼山にして無遮の大会をまう
けて、あまねく悲田貧病のものをすくふ。
僧衆には衲の袈裟千条、布の袈裟二
千条をぬひて供養せらる。