絵巻詞書集

 病草紙
息の香

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宮こに女あり。みめかたち、かみすが
たあるべかしかりければ、人ざうしにつ
かひけり。よそにみるおとこ、こゝろを
つくしけれども、いきのか、あまりくさく
て、ちかづきよりぬれば、はなをふさぎ
てにげぬ。たゞ、うちゐたるにも、かた
わらによる人は、くさゝたえがたかりけり。
【読み下し】
宮こに女あり。見目貌、髪姿
あるべかしかりければ、人雑仕に使
ひけり。他所に見る男、心を
尽くしけれども、息の香、あまり臭く
て、近づき寄りぬれば、鼻を塞ぎて
逃げぬ。ただ、うち居たるにも、傍
らに寄る人は、臭さ耐え難かりけり。