絵巻詞書集
病草紙
身肥え
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五寸の法師
息の香
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ちかごろ、七条わたりにかしあげする
女あり。いゑとみ、食ゆたかなるがゆへ
に、身こえ、しゝあまりて、行歩たや
すからず。まかたちのおんな、あひ
たすくといへども、あせをながして
あえたく、とてもかくてもくるしみ
つきぬものなり。
【読み下し】
近頃、七条辺に借上する
女あり。家富み、食豊かなるが故
に、身肥え、肉余りて、行歩容易
からず。婢の女、相
助くと雖も、汗を流して
喘たく、とてもかくても苦しみ
尽きぬものなり。